Street Fighter 6 レビュー

5.0
ゲームレビュー

格ゲー初心者やかつての格ゲーファンを含め、幅広いユーザーに楽しめるよう徹底して作られた最高のタイトル。

モダン操作

モダンタイプでの操作は特にパッドでの入力に最適化されていることが特長。
これまでカプコンの格闘ゲームのシリーズではオートガードやオートコンボなどの初心者救済のシステムがあったが、このモダンタイプはそのような初心者を救済するだけのためのものとは本質的に異なり、初心者から上級者までが実戦的に使える「新しい操作体系」として設計されている。

モダンタイプの操作方法は主にパッドでの操作経験に即しており、例えばアシストボタンは「押したまま」攻撃ボタンを押すことで攻撃内容が変化する、というもの。
いわゆる「シフトキー」のように使われるのだが、アケコンではこのようなボタンを押したまま別のボタンを操作する(同時押しではない)という方法に馴染みが無い一方で、パッドであれば「トリガーを引いたままボタンを押す」というような操作として馴染みやすい。

もちろん、ワンボタンで必殺技が出せるという点も大きな特徴のひとつだが、モダンの操作体系はこれ以外にも「パッドでおおよそイメージ通りにキャラが動かせる」ところまで比較的簡単に到達ができるよう操作体系が再構築されているため、格ゲー初心者だけでなく「昔はアケコンで格ゲーをやってたけど、パッドじゃ無理。いまさらアケコンを買ってまでスト6をやるほどではない」という層が短時間でパッド操作の立ち回りに慣れて現役復帰できるような仕組みとして最大限に機能する。

アケコンが理由で格ゲーから遠ざかってしまった人にこそ強く勧めたい。

ワールドツアー

オープンフィールドのメトロシティを舞台に、歴代のストリートファイターシリーズのキャラクターも登場する一人用モード。
クリアまで20時間以上あそべる、これだけで1タイトル分のボリューム。

ゲームの全体的な構成は対人戦に必要なテクニックなどを学べるチュートリアルとしても機能しており、ひと通り物語を楽しんでいる間にバトルシステムを理解したり、特定の立ち回りをする相手を倒すためのテクニックなどが学べるようにもなっている。

これまで、格ゲーと言えば「まずは50時間トレーニングモード籠っとけ。話はそれからだ」みたいなことを要求されるものも多かったが、このワールドツアーを楽しむことでトレーニングの敷居も大きく下げている。
もちろん、対人戦で勝つためにはその後のトレーニングも必要だが、ゲームを楽しんでいたらいつの間にか戦えるようになっていた、という構成はすばらしい。

物語はプレイヤーの分身となる主人公がストリートファイター6の登場キャラクターたちに師事しながら、ある事件の真相へと迫っていく、というもの。
キャラクターのバックグラウンドを知ることができるほか、過去のシリーズをフォローする小ネタなども多数散りばめられており、シリーズファンも初めての人も楽しめる。

通行人とバトルしたりビルからビルに頭突きで飛び移るようなトンデモシステムも、「そもそもこいつら昔から街中で跳ね回って殴り合ってるし」というシリーズの世界観にしっかり即しているので、そういうもの、として楽しむのが正解。
ひととおりストーリーを追った後、もっと強いやつらに合いたければバトルハブへ行け、というシステム上の導線がゲーム内で演出されるのもエモい。
(カプコンは本作での対人戦をエンドコンテンツとして位置付けている)

対戦で使えるキャラクターの追加衣装やバトルハブでも使えるエモートなどもゲットできるので、追加課金要素に抵抗がある人もまずはワールドツアーをやりこむだけでも満足度は高いと思う。

バトルハブ

ゲームセンター、アミューズメント施設を模したロビー機能。自分の作ったアバターで施設の中を歩きまわり、置かれているゲーム筐体で自由に遊ぶことができる。
スト6の対戦台のほか、ファイナルファイトやスト2などをはじめとした過去のカプコンのアーケードゲームまで遊べてしまうという太っ腹仕様。

施設の中にはフォトスポットやDJブースなどもあり、アバターのコミュニケーションエリアとしても機能する。

バトルハブはまさに「かつて人が集まっていたゲームセンター」の喧騒をそのまま作り出しており、筐体で対戦するだけでなく、連勝台をのぞき見したり応援したりと過ごし方は人それぞれ。

また、バトルハブの対戦はランクマッチなどとは異なり、あらゆる腕前のユーザーが入り乱れて乱入できるような仕組みになっていて、突然バカ強い人が入ってきてボロ負けすることもしばしば。
ただ、この体験はちょっと意外だったが、めちゃくちゃ強い人にボコボコにされても悔しくない、というかストレスはほとんど感じなかった。
むしろ超絶テクニックが見られて興奮したり、関心や尊敬の気持ちすらある。

ランクマッチの場合、基本的に対戦相手は「自分と同じレベル」になるため試合が拮抗することが多い。
そのため、特に負けた時の悔しさがどうしても積もってしまい、精神的にも疲弊する。
似たような立ち回りをする相手だと自分の課題にも気づきにくく、同レベルの相手と戦い続けること自体が成長思考に繋がりにくくなってしまうというジレンマもある。

一方、バトルハブではとにかく「いろんな人」が見られる。
50連勝している対戦台も、試合が終わり次第対戦できる「順番待ち」ができるので、腕試しに乱入するもよし、立ち回りを観戦するもよし。
勝ち負けに関係なくバトルハブでの体験すべてがひとつのショーやアトラクションのように、格闘ゲームでのコミュニケーションの楽しさに繋がっている。

また、自分が参加した試合だけでなく、他のユーザーとの戦歴やリプレイなど多くの対戦データがオープンになっていることで、対戦相手との勝負の結果にも納得がいきやすく、充実したデータが成長のための意欲にもつながる。
一応初心者サーバーはあるし、テキストでのやり取りなどにはある程度の制限があるが、使えるコミュニケーション機能のバランスが良い。

安易にユーザーを隔離したり情報を隠したりすることが「初心者救済」「健全なコミュニケーション」だ、という勘違いから解放された素晴らしいアイデアだと思う。
(格ゲーだと当たり前かもしれないけど、味方ともまともにコミュニケーションできないチーム対戦ゲームに辟易してたので目からウロコ。。)

もちろん、上手くなるためにはトレーニングモードに籠って黙々練習したほうが近道なんだけど、やっぱりトレモとランクマくらいしかすることが無くて神経すり減らすだけだとユーザーは定着しにくい。
バトルハブはただその空間に人が集まっているということ自体がゆるいモチベーションになり、ゲーム自体の稼働時間が上がる。
かつて、ゲーセンで連勝している人の対戦台の周りに集まってワイワイするような感じ。
格ゲーは対戦画面での殴り合いだけじゃなく、あの空間の雰囲気や過ごす時間も楽しみのひとつだったんだな、と思い出させてくれた。

新しい格ゲー初心者に体験してほしい。
かつての格ゲー世代にもう一度触れてほしい。
万人におススメしたい一作。

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